2023年11月13日月曜日

寒冷地あるある11-1;敷地内樹木について  










「森に囲まれた別荘で、小鳥のさえずりで目覚めるなんて、素敵よね~。」
  そんな声をよく耳にします。
「木漏れ日の中、テラスのハンモックでうたた寝出来るなんて、優雅よね~。」
  そんな声もたまに聞きます。
「せっかく都会から別荘に遊びに来るんだから、自然に囲まれていたいよね。」
  気持ちは分かります。。
「なんだか、木を伐採するって、木がかわいそう。」
  樹木も生命体ですから確かに。。
「30年前に別荘を建てたときは、富士山~湖迄良く見渡せたんだけどな~」
  樹木の成長って、分かりにくいものですよね。
「山中湖村って国立公園内だから、樹木は極力残すべきだよね。」
  確かにそうです。。
「東京で家を作るとき、樹木がもたらす、季節感、温度、湿度、日射などの
 コントロール機能は住環境の向上に大きく寄与すると、聞いたけど」
  手入れが行き届いていれば、確かにそうです。。 

そんな住環境と切っても切れない関係にある樹木ですが、
 建物付近の樹木は、デメリットや危険性もあります。
 落葉や樹液による屋根材を含めた建材の劣化,雨樋詰まり、
 自然倒木を始め、台風倒木、鹿による剥皮(はくひ)害倒木、
 樹木の病、土壌病害による倒木、
 雪の重さに耐えきれず倒木、などがつきものです。
 倒れる方向が運悪く、建物半壊。なども起こり得ます。
 
立ち木の所有権と管理
 立ち木とは、土地に生えているままの樹木、また、その集団を差し、
 民法上は、土地の定着物として不動産として取り扱われています。(86条)、
 また、立ち木の所有権は土地所有者に帰属するとあります(242条)。
 管理規定や管理規則を定めている管理別荘地では、
 立ち木の管理について、美観眺望保持の観点から、
 高さ何メートルを維持する等の詳細を決めている事もあります。
 そんな立ち木の管理ですが、別荘オーナーによっては、
 造園屋さんと年間契約をして、剪定、枝払い、芯留めなどを定期的に行い、
 維持管理に努めている方も多くいらっしゃいますが、
 年に数回程度の別荘利用しかしないオーナーは、
 ご自身でそれらの作業を行っているのを目にします。
 中には、完全に放置、伸びっぱなし、生えっぱなしも
 よく目にします。

 万一、敷地内樹木の病気に気付いていながら、数年放置し、
 忘れたころに倒木して隣の建物を壊してしまったら。。。。

 一部の条件を満たせば、火災保険の適用を受けることもできるそうですが、
 保険の専門家ではないので、ここに詳細を記載することは避けておきます。
 では、火災保険の適用が受けられない場合は。。。。
 法律の専門家ではないので、どのような責に問われるのか、
 詳細不明ですが、こっぴどいお咎めを食らうことは間違いないのでしょう。。。 

森林法
 2016年(平成28年)5月の森林法改正により、山荘の立地するエリアが、
 地域森林計対象地である場合、民間の土地であっても、
 森林所有者等が立木を伐採する場合、事前に伐採および伐採後の
 造林の計画届出を行うことが義務付けられています。
 ただ、中古の山荘を入手するなどして、既に建物が建っている区画に関しては、
 特段、届出は行わなくともよい場合がありますので、
 所轄行政庁にその旨、問い合わせてみましょう。
  山梨県地域森林計画について(こちら) 
  山中湖村伐採および伐採後の造林の届出等の制度について(こちら) 

樹木の伐採費用
 概して大きな木程、伐採処分費は高くなります。
 伐採樹木の周辺状況(周囲に電線、建物、その他工作物の有無)
 重機乗入れの可否(高所作業車、バックホー、クレーンなどなど)
 傾斜地、片枝張り、などの様々な条件によって
 伐採する方法は異なり、当然、費用も異なりますが、
 建物周囲(そのまま倒すと建物にあたる距離)の樹木伐採~処分費用は
 概ね以下程と言われます。
例1;直径30センチ、高さ20Mの針葉樹=5~7万/本
例2;直径40センチ、高さ20Mの広葉樹=8~10万/本
例3;直径50センチ、高さ25Mの広葉樹=13~20万/本
 伐採費用は、使用する重機や人件費の他、処分代が1/2~1/3を占めます。
 処分はご自身でなさる方(薪として利用)もいます。
 また、伐採業者の中には、粉砕機を自社完備しており、
 有機堆肥原料やバイオマス燃料としての活用、リサイクルを進めており、
 幹は無償にて引き取ってくださる会社さんもいらっしゃいます。















建物付近の樹木が建物に及ぼす害
 建物の設計を職業としている私共としては、樹木のもたらす
 良い効果や影響を、建築計画に取り入れることは多いのですが、
 山間部(周辺にも沢山木が生えている)における別荘(特に非永住の場合)
 においては、メリットを得るためには注意点が多く、
 どちらかというと、デメリットにつながることの方が多いため、
 建物付近の樹木が建物に及ぼす害を以下の様に考えています。
1;風通し、日照の悪化   
 (木造構造体への蟻害、木材腐朽菌の繁殖、カビの発生等)
2;樹木蒸散による建物周辺の湿気 
 (直径400Φ広葉樹=多い時約100L/日の水蒸気を発散)
3;倒木        
 (建物倒壊、屋根破壊、電線断線等)
4;落葉、樹液     
 (屋根、デッキ材等の劣化→雨漏りや、作り替え頻度高)

MS4Dがお勧めしている事
 新築する際、中古建物を入手した際、どちらにも言える事ですが、
 以下を推奨しています。
0;工事やメンテナンスを妨げる木=全て伐採(足場スペース含め)
1;屋根掛かりの木       =全て伐採(枝が屋根に掛かっている意)
2;病気の木          =全て伐採(葉枯、ナラ枯等病気)
3;観賞木、実のなる自生木は残す(桜、モミジ、ヤマボウシ、山椒等)
4;伐採した本数分、成長の遅い木を植樹
5;傾斜地の土流れ防止樹木は芯留めで活かす。
 以下は、立ち木の管理に自信がない方にお勧めしています。
6;倒木被害が大きい木 =全て伐採(倒木半径に建物、工作物、電線等が入る木)
7;成長の早い樹木   =全て伐採(松類、杉、桧、白樺等)

参考過去記事
 2011年台風によるMS4D山荘敷地内倒木  こちら
 2015年鹿による樹皮食害         こちら
 2018年台風による近所の倒木       こちら
 2019年積雪による近所の倒木       こちら
 2019年MS4D山荘敷地内山桜の芯留め   こちら
 2020年積雪による近所の倒木       こちら
 2022年ナラ枯れの蔓延          こちら
 2023年MS4D山荘敷地内の杉、悩んだ末の伐採 こちら
 2023年鹿による樹皮食害(剥皮(はくひ)害) こちら
 2023年自然倒木?ナラ枯れ倒木?      こちら
 2023年季節外れの防雨風雨による近所の倒木  こちら

今回は寒冷地における、敷地内樹木について記しましたが、
その他の寒冷地(山中湖)別荘の注意点はこちらをご覧ください。

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