2010年12月8日水曜日

中古山荘, 中古別荘について / 設計事務所MS4D

本日は仕事で讃美ケ丘に。中古山荘の改修工事計画の下見調査です。改修計画ではこの下見調査がひじょうーに大切です。新築の計画でも当然、どんな土地で、どんな風景が見えて、隣の建物の窓の位置や配置、伐採すべき樹木と残す木、どんな日差しで、どこから風が吹いてくるか、道路付けは?などなど調べるべきポイントは沢山ある訳ですが、改修においては、さらに、既に建っている建物状態を知ることが計画の方向性を決定します。建物状態を大きく4つにカテゴリー分けすると、1つ;法適合。2つ;経年劣化。3つ;建物の病。4つ;現在のライフスタイルにあっているか。などです。

1つめの法適合は、例えばですが、建物を建てる際には建築確認申請と呼ばれる手続きを行います。法規基準に沿って建物を計画していることを、図面などの紙面にて着工前にお役所に申請するわけです。基準を満たしていれば、建築確認済み証と呼ばれる書類が発行されます。その後、工事が完成すると、完了検査と呼ばれる検査を行います。建築確認の通りに工事を行い、法適合していることを検査し、合格すれば完了検査済み証なる書類が発行されます。この建築確認申請と、完了検査は建て主の義務なのですが、国土交通省の統計によると2000年以前の完了検査済証が発行された件数(分母は建築確認済発行数)は全国で50%未満であったことを鑑みると、多くの建物がこの完了検査を受けていない可能性があるのです。さらに、1980年以前になってくると建築確認すら申請せずに建てられた建物も多く存在します。これらは売却する際の資産価値に影響を与えます。
また、建設時の建築基準法はクリアしているが、その後基準が厳しい方へ変わり、現行法規基準を満たしていない場合。既存不適格建物等という言葉がそれにあたります。また、
例えば、1981年に新耐震基準が施工されました。1981年以前に建てられた建物の場合、耐震性に関して、建設当時の法律基準よりも、現行基準の方が高くなっています。その他、増改築を繰り返すことで、現況法律に抵触してしまっている場合もあります。建蔽率オーバー、容積率オーバー。その他、採光だったり、通風だったり、、、、、法律が全てではありませんが、その建物を使用する際の安全性の一つの基準になりますので、中古とはいえ、しっかりと現行法規に照らし合わせて査定します。

2つめの経年劣化は、設備面と建材の劣化とに分けられます。例えば、標高が高い讃美ヶ丘は、紫外線量も多いです。その分外部に面している建築材料は劣化が激しいと言えるでしょう。屋根材や外壁材、ウッドデッキ等です。自分がオフィスを構える東京都心部で同じ様に使用した建材も、ここではメンテナンスをまめに行わないと、たちまち劣化から病へ進行してしまいます。また、山中湖からの湿気を沢山含んだ空気に常にさらされている訳ですから、湿気+紫外線のダブルパンチと言えます。特に屋根材の劣化は雨漏り~構造躯体の腐朽といった病へ発展しかねない、重要なポイントです。古いトタン屋根に発錆はないか?屋内天井に雨染みはないか?などなど調査します。また設備はどうしても耐用年数というものがあるので、古くなった機械は故障していたり、型式が古いため部品の交換が出来なかったりします。浄化槽が合併槽ではなく、単独槽であることも古い建物ではよく見かけます。

3つめの建物の病とは、例えば虫食いや雨漏り、湿気による腐朽。構造躯体が外に現れている箇所(または、一部外壁材をめくり)をトンカチで叩いて、その反力で、柱や梁が活きているのか、再利用不可能か分かります。建物北側に土や落ち葉が長い年月で溜まり、土台が腐ってしまっているケースなど多々あります。これは、骨粗鬆症のような感じでしょうか。その他に地盤沈下や、崖の土が流れることによる、基礎のひび割れや、土台の浮きなどがあります。これは、外科的な外傷でしょうか。讃美ケ丘は傾斜地が多いので、長い間に土が流れ、基礎に無理な力がかかってひびが入る等の症状も、平らな土地に比べておきやすいと言えるでしょう。また、怖いのが寒冷地特有の病で、建設当初は凍結深度以深に基礎が建設されていたのですが、長い間に基礎周辺の土が流れ、基礎の下の土が冬場に凍結し、(水も凍ると体積が増えますよね)、建物を少しだけ持ち上げることになります。何度も繰り返し続くと、、、、建物にとって良くない状態です。湿気によるカビや、動物が巣を作ってしまっていることもあるでしょう。あまりに症状が進行している場合は、取り壊して作り直した方が早くて安いと言える場合もあるでしょう。そうならないように、メンテナンスはまめに行いましょう。これらを診断し、解決策を模索しているときの自分は、設計士というよりはドクターです。

4つめの現代のライフスタイルへの適正度合いですが、これは、何も基準がないので、自由です。というのが、築30年の建物を見て古くさいと感じる人もいれば、レトロで落ち着くという方もいますし、、、、。おきまりの良くあるケースとしては電気容量が小さすぎる、駐車場が狭すぎ、最低2台は欲しい、夏の避暑地として建設されているので、断熱性能が非常に低い。等でしょうか。

長くなってきたので、そろそろ終わりにしますが、著名な建築家が当時の知恵を振り絞って作った、すばらしい建物が讃美ケ丘には沢山あります。すこし、手を加えることで、寿命を延ばし、古い物(デザイン)と新しい物(デザイン)とが織混ざったような別荘地になったら素敵だろうなと思いながら、下見をするのでした。

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