2022年4月3日日曜日

寒冷地(山中湖)別荘、あるある8;湿気対策

山中地域気象観測所には湿度計が無いので、正確な湿度の統計が得られないのですが、
体感として、山中湖近辺は湿度が高いように感じます。
大きな水瓶があるのですから、想像に足ります。
また、建物の周囲に立ち木が密集しているかどうか、山や森を背負っているかどうかも、
局所的な湿度に影響します。植物たちは蒸散を常に行っているからです。
(蒸散とは植物が根より吸い上げた水分を大気中へ水蒸気として放出する現象)
(幹径400mm程度のブナ等の大径木は百リットル/日、蒸散すると言われます。)
梅雨が始まる6月くらいから、台風シーズンの終わる10月ころまでは、
市販の湿度計による計測値ですが、降雨がなくとも夜間~日の出までは90%近くまで湿度が上がることがあります。(朝霧の発生メカニズムと関係がありそうです)
雨の日は95~98%等ざらです。(私どもが暮らすMS4D山荘の周囲が森に囲まれていることも大いに影響していると思います。)
とはいえ、年間を通して気温が低いので不快指数は低いですが。















そんなわけで、山中湖近辺で建物を建てる際には何らかの湿気対策を行うことを
お勧めします。

対策1;立木の剪定、伐採
 建物を建てる際には、将来的な樹木の成長も見込んで、残す木と伐採する木を
 選別することが大切かと思います。
 建物周囲の雑草は定期的に草刈りするか、防草対策を行いましょう。
 すでに建物近くに樹木が生えている際は、剪定、または芯留め、
 または、伐採することをお勧めします。
 樹木や草がうっそうと生い茂っていると、風通しが悪く、蒸散によって
 建物周囲の湿度が高くなりがちだからです。

対策2;扉を開けておく
 新築で建物をご計画であれば、極力建物の中の空気が動きやすい間取り、工夫を
 行うとよろしいかと思います。
 例えば、客室用の部屋は、個室として確保するのではなく、LDKの片隅などが
  4枚引き戸などで、間仕切れ、来客の際は引き戸を閉め、普段はLDKと同じ空気を
  循環させておく。
 例えば、洗面、トイレなどに設ける収納は扉付ではなく、オープン棚として
  カゴ等の通気性の良い収納システムとする
 例えば、開き戸ではなく、極力引き戸を多用して、扉を開きっぱなしにしても
  邪魔にならないようなレイアウトとする。
 長く山荘を空ける場合は、山荘内の扉という扉はすべて開け放ち、空気がよどむ箇所を
 極力少なくする等の工夫でも効果はあります。

対策3;調湿材料
 しっくい、珪藻土、モイス、調湿タイル、等調湿効果のある建材を室内空間に
 使用することも一定の効果があります。
 無垢木も呼吸をしますので、柱や梁などを露出した内装とし、
 塗膜を作らない塗装を施すか、無塗装とすることで、調湿効果が期待できます。

対策4;除湿器
 除湿器の機構は大きく分けて2種類あります。
 コンプレッサー式と、デシカント式(ゼオライト式)です。
 それら2つの機能を組み合わせたハイブリッド式もいれると3種類です。
 コンプレッサー式は、
  電気エネルギーでコンプレッサーを駆動させ、冷媒がガスや液体に
  変化による際の熱移動を利用した除湿方式です。ほぼエアコンと同じ機構です。
  空気を冷却し結露を強制的に発生させて除湿する方式のため、
  冬場(室温低温乾燥時)には結露を発生させずらいといった短所があります。
  長所 室温の高い夏場に強い(冬場は弱い)
      除湿量がデシカント式に比べて多くパワフル
      消費電力はデシカント方式より少ない
  短所 機械本体が重たい(コンプレッサー搭載の為)
      運転時の放熱により室温が1~2度上昇
 デシカント式(ゼオライト式)
  空気中の湿度を吸収した除湿材は、電気ヒーターによって温められた後、
  熱交換器を通る際に室温によって冷やされ水滴に変化しタンクに貯蔵されます。
  長所 年間を通して使用できる
      コンプレッサー式に比べて運転音が静かで、本体は軽量コンパクト
  短所 ヒーター方式につき消費電力が大きい
      発熱量が多く、室温が3~8度上昇
どちらのタイプもタンクに水が溜まり、満水になると自動的に停止する商品が多いです。
山荘を留守にしている間のカビ対策に購入したのにすぐに満水になって止まってしまって。。
などなどをよく耳にします。
解決策はあります。タンクの代わりにドレーンホース(単なるゴムホース)を除湿器に直結し、
外壁に穴をあけて屋外に排出するか、浴室の排水溝に流せば、連続運転が可能になります。
(商品取扱説明書をよくご覧ください)
ちなみにMS4D山荘はデカント式の除湿器を
洗面所と寝室に2台置いています。
どちらもドレーンホースを直結して
屋外に排水しています。梅雨時期は毎年稼働させ、
洗面所の方は扉を締め切り衣類乾燥室にしています。
写真上、除湿器の右側に
ちらっと見えるのが、ホースです。
自分たちで外壁に穴をあけたので、
ホースの径に対して穴が大きく、
カマドウマの出入り口と化しています。

































ダイキン工業が開発した壁掛け除湿乾燥機カライエは、タンクを搭載しておらず、
水捨て不要で24時間365日連続運転が可能な事を売りにしています。(デシカント式)
ただ、外壁に穴を開ける、機器を壁に設置するなどの取付工事が必要となります。

ダイキン工業WEBサイトより
カライエの除湿の説明図




















対策5;OMソーラー
 OMソーラーは、私共の大学(東京芸術大学)の大先輩、建築家・奥村昭雄さんが
 開発した仕組みです。
 屋根で太陽熱を集め、その熱を暖房や給湯、換気機能に変換するシステムで、
 特殊な機械や装置はほとんど使わず、太陽熱と空気とを上手に活用して室内熱環境を
 年間を通して快適化する、パッシブソーラーシステムの1つです。
 同じく太陽熱を利用するシステムに太陽光発電がありますが、
 太陽光発電は集めた太陽光を電気に変換して利用するシステムであるのに対して、
 OMソーラーは集めた熱をそのまま使用するため効率的にエネルギーを生み出すことが   
 可能です。
 床下を含めた室内空間を常に空気が移動するため、湿気の対策、ならびに
 カビの抑制効果も高いとされています。
 OMソーラー会員の施工会社でないと工事が出来ない特殊なシステムでもあります。
 また、屋根面で太陽熱を集熱するため、南側に下る勾配の屋根を必ず設ける必要があり、
 建物の外観デザイン、設計方針に大きく影響します。

左が夏場       右が冬場
OMソーラー株式会社公式WEBサイト、
製品ラインナップ>OMソーラーより













対策6;空気循環システム
 MS4Dが設計を手掛ける新築別荘に良く用いる湿気対策の1つです。
 設けるのは、床に空気の吹き出し口、天井の最も高い場所に空気の吸い込み口。
 天井裏or床下に中間ダクトファン(換気扇のようなものです)+ダクトのみです。
 また、空気を循環させる空間(例えば床下、壁内)は必ず外部との気密性を確保します。
 夏場;夏の強い日差しが窓から宅内に入り込まない様に建物の庇の深さを計画します。
    湿気の多い梅雨~夏の時期は外気を宅内に導入せずに、宅内の空気を
    床下や、収納内、土を背負う壁内等に循環させることで、湿気対策を計ります。
 冬場;南中高度の低くなった太陽光線が、建物の奥の方まで届くように庇の
    深さを注意深く設計します。標高の高い山中湖の赤外線量は多く、
    また、冬場は晴天率が高いため、日中、宅内の床面(+床下の空気)を温めます。
    空気循環システムによって、床下の暖気+薪ストーブなどで暖められ、
    高天井付近に集まった暖気を1Fの床下に送ることで、
    宅内の隅々まで、暖気を巡らせます。

左は夏場         右は冬場














湿気やカビの対策上、気をつけなければならないのが、換気扇です。
山荘を留守にしている間、換気扇をつけっぱなしにすると、、、、
建物の中の空気が動きますので、カビ発生の対策にはなるのですが、空気を建物から排出するということは、どこかから吸っています。
湿度の高い梅雨時期、夏場に換気扇をつけると、湿気90%の外気を呼び込んでいるのと同じになります。


今回は湿気対策について記しましたが、
その他の寒冷地(山中湖)別荘の注意点はこちらをご覧ください。

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