2022年4月26日火曜日

寒冷地(山中湖)別荘、あるある4;高断熱性(窓編)

4;高断熱性(窓編)  東京都心部比較1.2~2.0倍 コスト増 
東京都心部でも最近では、省エネ法の観点から、高断熱仕様の建物が増えてきていますので、コスト比較1.2~2.0倍は、なんともあてはめにくいのですが、あくまで参考です。

さて、別荘ライフにおいて、”窓” は、大切なポイントになりますよね。
書斎に設けた窓から、森の木々にやってくる野鳥が観察出来たり、
リビングに横に連続して設けた大きな窓から、富士山+湖がパノラマ展開されていたら、
最高ですよね。

窓には、大きく4つの機能があるとされています。
 1;眺望
 2;通風
 3;採光
 4;人の出入り
 さらには、外観、内観のデザインを構成する大切な要素ですよね。
また、JIS基準に基づく窓の性能は大きく分けて5つあります。
 1;耐風圧性能 S-1~S-7までの7段階
 2;水密性 W-1~W-5までの5段階
 3;気密性 A-1~A-4までの4段階
 4;断熱性 なし~H-1~H-5の6段階
 5;遮音性 T-1~T-4の4段階
に加え防火性能などを含めて、ガラスとの組み合わせでこれらの性能が決まります。
寒冷地において、窓に関して気をつけなければいけないのが、
”窓”を設けた部分は、”壁”の部分に比べて、断熱性能が低くなりがちです。
それ以外にも、山の頂上等の立地の場合は、耐風圧も気にするべきですし、
谷に面する立地では、吹き上げてくる風による雨水進入の点で水密性が重要ですし、
周囲が木々に囲まれた立地においては、台風時の枝等の飛来物に対する対策も必要となってきますが、それらまで、記していると、紙面がいくらあっても足りないので、
断熱性とコストに絞ってお話します。

窓=サッシの断熱性能を構成する要素は、大きく分けて2つあります。
サッシ本体と、ガラスです。

サッシ本体
 どんな種類があって、それぞれ、どんな特徴があるのか。
 木製サッシ、樹脂サッシ、アルミ樹脂複合サッシ、アルミサッシ、スチールサッシ、
 ステンレスサッシなどが主なサッシの種類です。
 上記5つの性能に加えて、コスト、メンテナンス性はそれぞれ異なります。
 コストと断熱性のみをピックアップして図にすると以下です。


 寒冷地山中湖では、最低でも断熱性能としてアルミ樹脂複合サッシ(黄色)程度は
 採用したいところです。(YKKAPエピソードⅡ、LIXILサーモスL、X等)
 もちろん、樹脂サッシ(YKKAP APW、LIXIL EW等)や、木製サッシなどのより高断熱な
 サッシの選択は可能ですが、アルミ、スチール、ステンレスなどの低断熱サッシを
 採用した場合は、カーテンや障子などその他のアイテムで断熱性を上げない限り、
 真冬利用は寒さとの我慢比べになると考えた方が良いかと思います。
 図に木製サッシ(茶色)の占める範囲を広く描いたのは、
 FIX窓などの開閉機構のない木製窓は、大工さんに枠を作ってもらい、
 ガラス屋さんにガラスをはめてもらうといった、低価格でも実現する理由と、
 北欧などからの輸入品の中には、かなり高額なものが存在するからです。
 ちなみに、MS4D山荘は最も低断熱のアルミサッシです。
 トーメイ雨戸+ツインポリカ簡易インナーサッシを最近制作するまでは、
 真冬に来荘した際、暖房が効いてくる2~3時間は山荘の中でコートを着ていました。
 

ガラス
 どんな種類があるのか。実は、非常に多岐にわたります。
 例えば、強化ガラス、熱線反射ガラス、熱線吸収ガラス、防犯合せガラス、
 高透過ガラス、フロストガラス、型ガラス、すりガラス、ミラーガラス、
 ブラインド入り複層ガラス、瞬間調光ガラス等々。。
 これらすべてのガラス種にまで言及し始めると、紙面が足りませんので、
 断熱性に係る機能性ガラスのうち、主だったもののコストと
 断熱性のみを比較すると下図のようになります。

 ただ、LOW-E複層ガラスといっても、中空層にガスを入れたものと、
 (アルゴンガス、クリプトンガス)
 乾燥空気のものとでは、断熱性もコストも異なりますし、
 LOW-E膜を2枚のガラスのどちらに貼るかによって
 断熱タイプ(日射取得型)と遮熱タイプ(日射遮蔽型)とがあるように、
 一概には、図のような単純な断熱性とコストの比較は難しいのが実情です。
 また、一般事項として記しておくと、採用できるガラスの大きさは、
(工場で製作して搬送できる最大寸法)
 断熱性能にほぼ比例して、小さくなると思ってください。

 寒冷地で、オールシーズン利用をご希望であれば、最低でも一般複層ガラス、
 できればLOW-E複層ガラスの日射取得型を採用したいところです。

 MS4Dの過去に設計した別荘において、LOW-E複層ではなく、
 乾燥空気層12mm以上の一般ペアガラスでも十分暖かい別荘を実現できた例があります。
 南下がりの傾斜地で、南面の庇は1.3mと深く、
 東にも南にもたっぷりと開口部が設けられ、
 室内空気循環システムを設けたその別荘は、真冬の朝、カーテンを開け
 太陽光を家の中に取り込むと、見る見るうちに温度は上昇し、20度。
 空気の澄んでいる日は25度くらいまで上がるそうです。
 さすがに日没以降は室内温度が徐々に下がるので、暖房をつけるそうです。
 夏場は、大きく張り出した庇が、太陽光を遮断し、家の中は涼しく過ごせます。

 トリプルガラス等のより断熱性の高いガラスを採用しておけば、
 それだけで、寒冷地対策が万全だと言い切れるわけではなく、
(断熱性の高いガラスは、概して製作可能範囲が小さい)
 開口部の向きや大きさを十分吟味し、
 標高が高く、赤外線量も多い山中湖では、晴天が多い冬に、
 太陽光をどれくらい、室内環境に取り込むかが、(本当の意味での)省エネの観点で
 大切かと思います。
 日射を遮れる日射遮蔽型LOW-Eを選択するか、日射取得型LOW-Eにて赤外線熱
 宅内に入れるか、LOW-Eではなく、一般複層ガラスでも
 十分な性能を発揮できるかどうかは
 建物の向きや、窓の位置、大きさ、庇の深さ、カーテンは設置したくないかどうか、
 などから厳密には決定します。

 最近、LIXIL社がAGC旭硝子による技術提供の元、開発した
 ”世界発の高性能5層ガラス搭載のレガリス”、は、山中湖で採用するには
 オーバースペックだと思います。




ちなみに、MS4D山荘に導入されているガラスは最も断熱性の低い、
単層ガラス=シングルガラスです。
(真冬は室内ガラス面の結露水が凍り付いていました。過去記事こちら

今回は高断熱性(窓編)でしたが、その他の注意点についてもまとめてありますので、
 ご覧ください(寒冷地別荘の注意点こちら)。
 3;高断熱性(床壁天井編)は、、、、ムズイ。記すべき事項が多すぎる。


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